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目の前で大黒柱を射止める/徳井 正樹

更新日:4月16日

「家族に対する愛情と慈しみを、そのまま家の形に取り入れたい」。

家の計画にあたり、これが設計者に課せられた命題です。そして建主夫妻から与えられた明快な言葉の背景には、掛け廻る3人の子供達の表情や声に包まれた豊かな家族時間が欲しい、、。これを無限に包容できる家をどう実現させるか!、それに出した答えが「山で大黒柱を買い付ける」でした。

 素人の建主を山に連れ出し、森の中から一本の大樹を選んもらい、それを大黒柱にする。大きなリスクを伴う企てでしたが、残った丸太は天井、床、造作材に使い回すので無駄な材料は一切出さないはず!。必ずこの体験は「家族を束ねる家づくりの幹」となると提案者としての腹を決めました。

 建主はこの試みに二つ返事で快諾。建主、森林主、製材所、工務店など様々な役者には懐深い理解が必要な試みは、設計者が仕掛けなければ誰も手を出すことは無いでしょう。しかし、大仕掛けは現場関係者に「類い稀な共同作戦の一員」を意識させました。原木を選び、目の前で伐採を見届け、一時林道を封鎖して切断運搬、そして巨大な帯鋸に掛けられ樹齢130年の年輪に刃物を入れていく、、その瞬間を子供達にも目撃させた体験熱は、現場に入っても冷めることなく「自分たちの家を自分たちで作る」感をもった建主家族は現場に日参します。当然その思いは職人たちにも伝わ理、希有な一体感が現場を包んで行きました。そして一年後、家族の愛情は山と森と現場を繋いだ家は、外見は奢らずも豊かな家族の形が「家」とまとまりました。

徳井 正樹/徳井正樹建築研究室)

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