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建築家な私。7/高野 保光

住まいは身体的体験で住み手と一体に


「何故でしょう?もう何年も前から住んでいるみたいで、とっても落ち着きます。」


新しい住まいが竣工し、その空間で生活が始まったばかりのご家族に、このような感想を頂く時が、設計者としてもっとも嬉しく幸せな瞬間です。建て主ご家族が新居に身を預けて、その空間に違和感なく馴染み、一体化していく過程で感じ取る素直な言葉だからです。


家づくりを考えているご家族は、まずは情報収集から始めると思います。その際に参考にするのはSNSやネットの情報、書籍などからの視覚的情報がほとんどではないでしょうか。しかし、家をつくる際には、住まいの手触り・足触り・空気感・質感・スケール感など、身体的・触覚的な経験をすることも大変重要になります。住むということは、実際にその空間に身を置いて、床や壁に触り、座り・・・という身体的な行為になるからです。できれば、見た目の情報や理屈だけに負けないように、触覚的体験もしたいものです。そこでの自分の感覚を信じることも重要になります。意中の設計者と直接会って話をし、実際に設計された空間を体験させてもらうとか、過去に見たり触れたりしてきた、古建築や民家などでの、触覚的体験も家づくりに参考になるでしょう。

このような視覚情報だけに頼らない判断材料も大切にして、家づくりをしたいものです。 新しい住まいで暮らしが始まれば、その家はやがて家族と一つになって日々の生活のなかで自然と身体化されていくものです。


美しい光が壁に差し込み一足早く春の訪れを感じたり、雨に打たれる木々の葉の動きや風の音に耳を傾けたり、家族それぞれがそれぞれの居場所で体験する、触覚を中心とする住まいでの当たり前の生活が、日々を支え心豊かなものにしていくのです。

 

住まいはそんな身体的体験を重ねながら、住み手と一体になるかけがえのない居場所と言えるのではないでしょうか。


高野 保光/遊空間設計室 )



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