『 私の本棚 』
私の本棚には小林秀雄コーナーがあります。 20代で事務所勤の薄給を叩いて手に入れた全集、その後50代で小林秀雄生誕100年に出た豪華装丁の二種類の全集です。
私の青春時に、モーツァルト・ドフトエフスキー・ランボー・ゴッホ等、極め付きの天才達を、小林秀雄の名文を通し深く触れることで、決定的な影響を受けました。中でも、中学生からクラシック音楽に取りつかれていた私は、小林秀雄のモーツァルトを読んだことで音楽に対するスタンスが、趣味から人生に、つまり今を生きる糧に変わったのです。
半世紀ぶりに豪華装丁のモーツアルトを再読してみて、当初受けた衝撃と言うよりも、書かれている深い意味が良くわかり、引用された本も音楽も全て読破し繰り返し聴きこんでいたのでより感銘を受けました。 その一端を書き写すと、
『35年の短い一生にも拘らず、モーツァルトの作品の量は膨大なもので、・・・・一般に知られている作品を聞いただけでも、凡そ比類のない質の多様性に出会うことである。スタンダールは、ドンジョバンニを聞いて、耳に於けるシエクスピアの恐怖と言ったが。そう言われれば、モーツァルトの多様性も、シエクスピアの多様性に似ているかもしれない。』
等、ここにいろいろ挙げられませんので、是非とも一読をお勧めします。
( 十文字 豊/アルコーブ・U )
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