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建築家な私。4/川口通正

更新日:1月18日

「都市の小さな森づくりに向けて」

文京区小石川にある僕の家の小さな森について少しお話してみたいと思います。

14年前に小石川に変形崖付きの敷地に息子との共同設計で自宅を建てることになりました。この敷地は俗に言う旗竿敷地というものであり、間口2.4m、長さ約7mの南側アプローチを経て、奥でL字形に膨らんでいます。そして、東側の先端に約10mの崖を抱えた土地です。間口巾以外南側は3階建ての鉄筋コンクリートの建物が建っていました。前の所有者は土地を売却するためか木造の平屋と建物周辺の樹々を全て伐ってしまっていました。私たちが初めて見た敷地は崖上で更地になった時でしたが、そこには梅の大木があったと隣人から後で聞きました。その梅の木に対して少しかわいそうな気持ちに僕はなりました。さらに北側には常緑樹の大木が数本ある住宅が建っていました。

僕は30年近く小石川で土地を探していましたがなかなか理想の場所がありませんでした。条件が良い土地は高額でとても手に入れられるものではありませんし、変形狭小敷地はまずありませんでした。

しかしある日偶然、不動産広告を僕と家族が別々の場所で知り、この土地ならひょっとすると僕たちの設計でなんとかなるかもと思い、現地をすぐ見ようとその場所に夜の8時に集合しました。 土地は思いの他広く、東側一方だけ、夜景の見晴らしが良く、崖を含めて面積が37坪ありました。かねてから自邸を建てるなら敷地内にゆっくりとした時間の中で庭、林、そして森へと移行するような自然を持ちたいと考えていました。小石川のような都会のど真ん中でそのような夢とも妄想ともいえるような事を考えることは他人から実現不可能と言われるのも当然でした。しかし、北側に大木群がありそれも加えて実現できるものと思いました。かつて先輩建築家の川崎君子さんに「自然持ちになれたら幸せよ。」と言われた一言を覚えていました。

僕は諦めませんでした。 もしここに自邸の設計をするなら地上のアプローチ庭と地下庭の二つの庭をつくりたいと考えていました。地下庭といっても元々あったわけではなく崖の土を切り崩して下の残っている擁壁への荷重を軽減し、住宅本体も鋼管杭を打設してさらに崖への荷重を軽くできたら良いと思いました。そこに奥行6.2m、巾3.8mのピアノ室から外へ繋がる庭をつくることを思っていました。一方で道路から入る奥行7m巾、2.4mのアプローチ空間を庭にしたいと考え、二つの庭をつくりたいと建築計画のコンセプトに入れていました。さらに東西に抜ける隣地建物の間に茶室の露地のような巾の狭い小道をつくりたいとも考え、3つの外部スペースのある家にしたいと強く思うようになりました。そして時間の経過と共に最終的に隣地を含めた小さな森になればと考えていたのです。 これらの小さな自然を僕は「ポケットグリーン」と名付けています。

この小石川周辺で50年の間に経済効率と相続税のために木造のお屋敷がたくさん取り壊され、大量の庭木がその後の開発のために伐採されました。僕はそれがとても残念です。 自邸では室内から美しく見える場所に樹々の植物の性格を良く考え、その高木、中木、低木を選択していきました。高木は植木職人に植えてもらい、残りの中木、低木、グランドカバーは自分たちで植えました。地下庭にはモウソウチクと12月頃に紅葉するモミジを各階から見えるように植えました。地下に植えるものは3層分の高さに育ってほしいので、背の高くなる植木を選びました。アプローチ庭には株立のヤマモミジ5本、ツカサモミジ1本、ノムラモミジ1本、ヒメシャラ1本、計8本の高木を植えました。 中木、低木はカンツバキ、カンチク、ユキヤナギ、コデマリ、ヤマブキ、ナンテン、コムラサキシキブ、ガクアジサイ、バイカウツギ、ヒメウツギ、ワビスケ、ハナイカダ、アカハナウツギ、ヒユガミズキ、ビョウヤナギ、フジバカマ、センリョウ、マンリョウ、ヤブコウジ、キチジョウソウ、フッキソウ、シロヤマブキなどを植えています。 地下庭には穂先を切った高さ5mのモウソウチク5本、ヤマモミジ2本、オオモミジ1本の8本を植えました。中木、低木はヤマブキ、オリーブ、ハナイカダ、シロヤマブキを植えました。モウソウチクは新しく出たものの中には現在高さ12mのものもあります。 今後、それぞれの高木がもっと幹が太くなり丈も高くなるのでとても楽しみにしています。

この二つの庭が林から森らしくなるには、長い歳月が掛かりました。 その期間の中で様々な植物の環境とのなじみ具合が悪く枯れてしまうものもたくさんありました。また意外なところで思いのほか成長が良かったものもあります。風通し、水やりし易さ、日当たり、半日陰、日陰、保水力、水はけの良し悪し等、植物の性格の難しさもたくさんある中で、庭を森に近づけていきます。だんだん葉が茂り、日陰が出来てくるとその下にある植木で日当たりのほしい樹種は弱っていくことになります。また一方で日陰のほしい植木は元気になります。自然の状況変化との調和により、ゆっくりと森の形態に近づきます。

現在森づくりを始めて約12年間経っています。 特に夏の水やりは大変ですが、僕は自動散水は好みません。なぜかというとそれぞれに水やりをする時、植物の元気度が良く分かるのです。その日、その日で人間のからだと同じように変化します。特に今年のような暑さは植物も人間と同じようにたえるので水をまめに充分やらなければならないのが楽しいのです。

川口 通正/川口通正建築研究所 )



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