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私の家づくり。2/杉浦 充

更新日:2022年11月26日

『変形地に計画した全館空調の住まい』



<「私の家づくり1。」の続き>


 変形敷地であっても費用を抑えるために、基本的に木造の規格寸法を遵守しつつ変形に対応できる軸組を検討しました。

難題でしたがこれらを解決していく事は楽しい作業でもあります。

<構造軸組のスケッチ>

こちらは企画設計時の模型になります。


コロナ禍の工事となり気苦労がありましたが、このように住まいが完成しました。


 所有するSUV車や自転車が納められるビルトインガレージの前は、雨天時に有用する屋根付きのポーチ兼、客用の駐車スペースであり、インターホンの裏側には常時使用する自転車の停車スペースになります。

玄関三和土には、洗面台を設け、反対側にはウォークイン収納が付随します。

  <➊玄関三和に洗面台/➋玄関ウォークイン収納/➌トイレ>

右手は畳敷きの客間があり、奧に主寝室があります。 階段下に扉付の収納があり、奧にトイレへの扉とウォークイン収納入口が見えます。

  <➎主寝室/➏主寝室からの見返し>

畳敷きの客間の奧は板の間がありピアノを置くスペースになります。<➍畳敷きの客間>

2階への階段を登ります。<➐階段>


左手は水廻りや大容量の収納がある回遊動線になります。<➑左手の回遊動線> 右手はキッチンダイニングエリアになります。<➑右手のキッチンダイニングエリア>

回遊動線にある収納です。右手は2段高い位置にあるリビングです。<❾回遊動線>

2階の回遊動線には、洗面・浴室やトイレ、大容量の収納と子供部屋への入口があり、リビングダイニングエリアとは階段2段分の高さのステップ床となっています。

  <➓回遊動線から子供部屋を見る>

ステップさせることで空間が繋がりつつも分節する事で、生活していて広く感じる心理的効果があります。

 更には道路側の外観の高さが2段分低くなり、景観上も圧迫感が抑えられて街並にも貢献します。更には北側隣戸への採光も有利に働きます。

子供部屋から回遊動線への見返しです。<⓫子供部屋>

いよいよ開放的なリビングエリアです。<⓬リビングからキッチンダイニングエリアを見る>

ダイニングから南側には三角形の広いデッキテラスが繋がり、気候の良い時期は外での食事も愉しめます。<⓬リビングからダイニングや屋外デッキを見る>

室内から窺えないデッキスペースの奧は物干しスペースになります。

  <⓭デッキスペースの奧は物干しスパースに>


屋根形に沿う形状が特徴的な、髙天井の開放的なダイニング・リビングのエリアです。

  <⓰ダイニング上部/⓰リビング上部>

キッチン・ダイニング エリアからリビングの高窓を介して緑の借景が臨めます。<緑の借景>

特徴的なダイニング・リビングの天井見上げです。<ダイニング・リビングの天井見上げ>

最上階の寝室と階段途中にある小屋裏収納です。<⓮最上階寝室.jpg/⓯小屋裏収納.jpg>

写真に写っていませんが、最上階の寝室からはダイニング・リビングの吹き抜けを見下ろす事ができる内窓があります。


 このように、周辺環境を借景にとりこみつつ、プライバシーも確保した室内空間となり、ステップする床や天井高の変化によって様々な居場所が生まれました。曇り空でも明るく居心地の良い住まいです。

 結果的には断熱仕様の向上や空調システムの導入に、繰り返しの大きな地震にも粘り強く耐える制震構造までも付加することができました。

 疫病禍の最中にあってはウッドショック等で工事が遅延してしまい、お引き渡し後の残工事も残りましたが住まい手の懐の広さに救われました。

 今現在はとても快適に住まわれていると伺って、こちらも重責任務が果たせたことに安堵し、住まいづくりに関われた事に感謝しました。


 新しい住まいは、UA値0.52W /(㎡K)、断熱等性能等級5以上、断熱性能推奨水準HEAT20 G1以上の性能を有し、家庭用のエアコン一台と床下空間を利用した、輻射と対流のハイブリッド方式の全館空調システムを導入する事で、ランニングコストを抑えつつ快適な室内環境を得ています。 

 以前のお住まいが長期優良住宅の認定も受けていたことを最近伝えられましたが、実際には現在の生活が遥かに快適であることを建て主より伺う事ができました。

 この類のお墨付きを謳ったチラシや広告を度々目にするようになりましたが、法的な数値を整えても、変化する生活スタイルに沿えなければ住み続ける事が難しくなってしまう事を目の当たりにしました。

 温熱環境性能については現時点では断熱性能等級4~5が経済バランスの良いところであり、それ以上の性能を望むべきかどうかの判断がこの頃の検討材料の一つになりました。予算は無限ではありませんので、耐震や制震、空調換気設備、自然素材等の仕上げ、住設機器のグレード、薪ストーブ等々、どこに費用をかけたいかの優先順位はお施主さん毎に異なります。

 国は耐震や断熱性能や維持管理等に基準を定め、高い性能で造る程より金利や減税の割合を優遇する措置を行っていますが、先行投資のできる方がより優遇受けられてしまうという本末転倒な面も感じます。個人的には、ある一定以上の性能があれば、それ以上の性能差による差別化は無くしていただいて、個別解である建て主に選択の余地を残してほしいと思うこの頃です。

 また、メーカー(規格化)住宅も自由設計を謳っていますが、実際には個々の条件を叶えるには限界があります。設計とは単に間取りを整える作業ではなく、多角的な方向で想像力を働かせてとり組むモノとコトの立体構成とでも言ったらよいでしょうか。与えられた予算や様々な条件をふまえつつ、個別解の可能性を探り、総合的なバランスを図ってまとめていくような、とても大切な行為である事が少しでも伝わると嬉しいです。


杉浦 充/充総合計画一級建築事務所)

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