綠大好き・綠の効用
私の生まれ育ちは群馬県の田舎です。現在は市街化してしまいましたが、子供の頃周囲には畑や林が多く残っていました。その性かどうかは判りませんが、綠がある環境が大好きです。上京して半世紀、10回以上引っ越ししましたが、選ぶ条件はいつも“窓から綠が見えること”。建物だけの殺風景な景色がいやだったのです。たまに出かける散歩でも交差点にくると、綠が見える方へ自然と足が向いてしまいます。住宅設計の仕事に長く携わってきましたので、綠に関する知識は自然と増えてきました。大好きな「綠の効用」について整理してみます。
・日陰効果
木陰が涼しいことは誰でも知っています。直射日光を遮っているからだけではありません。植物が行っている蒸散作用によって冷却効果があるからです。根から吸い上げた水分を葉から蒸発させ気化熱によって周囲を冷やしています。単独の樹木より公園などの樹木群はより涼しくなります。庇なども日射を遮ってはくれますが、庇自体が暑くなってしまうので、木陰との冷却効果の差は歴然です。
・壁面緑化の効用・・・緑化による断熱効果
下記の写真は、散歩中に見つけたコンクリート打ち放しの建物です。サーモグラフィーによる温度測定では、道路の温度は50,3℃、コンクリートの外壁は46.9℃、壁面緑化部分は35.1℃でした。夜になって外気温度が下がってもコンクリートは蓄熱効果が高いので、室内温度は下がらずクーラーをつけっぱなしにしなくてはならなくなるでしょう。壁面緑化すると壁面からの放射される熱量が減るので、近くにいる人の体感温度も低下します。直接外壁に植物を這わせなくても綠で壁を日陰にすれば同じ効果が得られます。
・安らぎ効果
心身におよぼす綠の効果が明らかになっているそうです。アメリカのある病院で窓からレンガ塀しか見えない患者と落葉樹の緑が見える患者のカルテを比較したところ、綠の見える患者の方が鎮痛剤の要求が少なく治りも早かったとの報告があるそうです。O.ヘンリーの小説「最後の一葉」を思い出しますね。
[半田事例]3階建て2世帯住宅
周囲にはほとんど綠がない環境ですが、玄関脇、二階のバルコニー、屋上を緑化しました。
わずか17坪の敷地ですが、玄関脇にシマトネリコを植えました。大きく育ち二階小上がりの窓を覆っています。LDKに面した二階のバルコニーは3帖ほど。あふれる程の緑が、室内を町中とは思えないほど爽やかにしてくれています。
・悪条件でも綠の環境はつくれる・・・バルコニーの緑化
私の設計事務所はマンションの一室です。ビルに囲まれた殺風景な環境で周囲に綠はありませんが、バルコニーに植木鉢を並べてヒメシャラ、ヤマボウシ、アオダモ、コナラ、ジュヅサンゴなどが植えてあります。植物たちが景色をすっかり改善してくれました。新緑や紅葉、季節の花も楽しみです。
(半田 雅俊/半田雅俊設計事務所)
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