『 泰山会の見学会 』 / 伊澤 淳子
泰山館をご存じですか? 目黒にある、中庭を囲むように建てられた低層賃貸マンションです。
設計は、7月から「家づくりの会」の代表を務める泉幸甫氏。竣工から36年を迎えたこの建物が、このたび日本建築家協会(JIA)の「JIA25年賞」を受賞しました。

◆ JIA25年賞とは ◆
「25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築」を登録・顕彰します。
建築が未来に向けて生き続けていくために、多様化する社会の中で建築が果たすべき役割を確認するとともに、次世代につながる建築のあり方を提示することが目的です。(JIAのホームページより)


10月3日、見学会と「泰山館はどのようにして泰山館となったか」と題したセミナーが行われました。参加者には、設計を仕事とする若い方々の姿も多く見られました。
見学会の後、泉氏が何を考え、どのような人たちと関わりながら、この建物をつくり上げていったのか、お話を伺いました。

地形の変更を最小限に抑え、すでにある地形を生かしてつくる。そして、完成後に住まう人々、地域の人々にに共感してもらえる建物にするために、建て主だけでなくその建物に関わる多くの人たちと、パタンランゲージを用いて考えを共有しました。
泰山館での試みは、その後のたくさんの集合住宅の設計へとつながり大学院で博士論文を書くきっかけにもなったそうです。
3年前には外装や屋根、外構の手入れが行われ、きれいになりましたが、建物の姿を大きく変えるものではありませんでした。
デザインには時代ごとの流行があります。しかし建築には、時代が変わっても失われない価値が求められるのだと思います。 時代を超えるというと、大きな思想や特別な発想が焦点となります。しかし、それを支えているのは、設計の過程で重ねられる小さな思考や判断の一つひとつなのかもしれません。

36年を経た今も変わらずに受け入れられている泰山館は、きっとこれから先も変わらず、人々に受け入れられていくのでしょう。
当初、「25年賞」と聞いたときは、海外と比較すれば、短い年月だなと思いました。25年は、建物にとって一つの通過点にすぎません。この賞は、これからも永く在り続けるだろう建物に贈られる賞なのではないか。泰山館を訪れて、そんなふうに思いました。
伊澤 淳子/一級建築士事務所伊澤計画




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