
あたり前な話なのですが、建物の新築やリノベーションをするときに、よくその立地と環境を調査することから始まります。
その場所の太陽の運行、風の流れ、敷地の周りの家の建ち具合、将来敷地の南面にマンションなど日陰になるかもしれない建物を予想します。さらに隣家や通りからの視線の高低を考慮することを大切にします。

近年、好例がありました。
もともとは店舗併用住宅(1階が新聞店2・3階が住居)でした。長い歳月を経、建て主もお年を召され、新聞店を廃業したことによって、1階の店舗の改装(リノベーション)の相談がありました。
予想通り、南側に巨大なマンションが立ちはだかり南側採光は絶望的でした。幸いにも中庭からの採光を考慮してあったのでうまく解決、正解でした。いまも素敵な生活を送られています。ただし、完成時がコロナ騒ぎで内覧会は中止せざるを得ませんでした。
ご近所のみなさまの要望に応えられず、大変残念でした。
ご希望があればぜひ見てほしい建物です。
元々の建物は33年前、建築雑誌「ニューハウス」に掲載された建物です。この記事をご覧になり電話をいただいたことから始まりました。依頼主の要望が大学ノートに目いっぱいの切り抜き記事、メモ書きで溢れ、意気込みを感じた記憶があります。
私が一言、「この要望書の通りのものは無理です。おそらく50パーセントぐらいです」とお伝えすると、「思いの丈を書いたのでこれでスッキリしました。あとは、お任せします」とのこと。いい思い出です。
ところで、プランニングの試行錯誤を続けていると、不思議なもので、絡み合った条件の駒が、納まるべきところにぴたっと納まってくるものなのです。そうでないと、いいものも
出来てこない。さらに、完成後、建て主さんの夢を立ち上げ、喜びを分かち合えたら最高です。そのために仕事をしているようなものなのですから。
「夢は見るものではなく実現するものです」ね。
(小川 任信/小川任信建築設計事務所)
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