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『 建て替えか、それともリフォームか 』/坂東 順子


 一昨年のこと、友人から家を建て替えたいと設計依頼があった。

都内にある築40余年の住宅は、冬寒くて夏暑く、近隣の住宅が3階建に変わり、日照も難しくなっている。相続を機に建て替えたいという。現行の法規制(高度斜線等)が厳しくなっており、建て替えると既存の2階位置は認められない。建蔽率や容積率には余裕があるが、建物位置が制約を受け、要望された既存のような庭が確保できない。そこで、建物位置を既存より道路と隣地境界に近づけることで庭を確保。家族で2世帯にするかなどの検討を経て、息子さんの事務所との併用住宅に決まった。その上でさらなる要望も満たした基本プランが出来上がった


 ところが、概算見積工事費が随分と高額になった。コロナ以降の建築費の高騰に加え、アスベストの処分費を含むコンクリート造の解体費は予想をはるかに超えていた。友人にとっては出せない額ではないが、老後の生活を考えると負担をできるだけ抑えたいというのが本音だった。住宅は人の暮らしの快適さを左右する大きな要素である。新築することで多くの夢が実現されよう。しかし、経済的なゆとりがなくなっては元も子もない。

 本当に建て替える必要があるだろうかと、考え直した。

この住宅は築40余年の特殊な鉄筋コンクリート壁式構造である。基礎や壁・梁に大きなひび割れは見当たらず、劣化はそれほどでもないようだ。

耐震補強と断熱のリフォーム工事をすれば、まだまだ住めるのではないか。


 幸いにこの住宅を設計した方が見つかり、劣化状況と構造計算のチェックをしてもらったところ、構造体は水平ブレースを入れるなどの耐震補強をすれば大丈夫という判定が得られた。既存の庭を残したまま、1階に1部屋増築する。キッチンを移動してLDKと庭を連繋させる。他の水まわりは少し組み替え使い勝手をよくするなど、安心と快適さを求めて現在リフォーム工事中である。

 両親が建てた思い出深い住宅に、住み続けることには大きな意味がある。

建て替え計画から始まり、既存の良さを残して付加価値のある住宅へとリフォームすることになった話である。

坂東順子/J環境計画)

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